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健康コラム

Vol.9 時間栄養学

~時間で変わる 食事の効果~

「朝が苦手」、「よく眠れない」、「ダイエットしてもなかなか痩せない」などと感じることはありませんか?
もしかすると、原因は「食べる時間」にあるかもしれません。今回は、今注目されている時間栄養学についてご紹介します。

【時間栄養学とは】

近年の研究により、体の中のあらゆる細胞(脳、胃、腸、肝臓、腎臓、血管や皮膚など)には体内時計があり、この体内時計によって消化、吸収、代謝の働きが大きく左右されていることが分かってきました。「何を」、「どれだけ食べるか」、という従来の栄養学に、体内時計に合わせて食事を「いつ」、「どのように」食べるかの視点を加えた学問が、時間栄養学です。
私たちの体内時計は毎日、「光の刺激」と「食事の刺激」でリセットされているといわれています。朝の太陽の光によって脳が「朝になった」と認識し、体の中のあらゆる細胞に対して一斉に「それぞれの体内時計を朝に合わせなさい」と指示します。同様に、決まった時間に食事をすることにより、各細胞の体内時計を合わせる仕組みになっています。体内時計をしっかりとコントロールすることにより、仕事の効率アップや不眠の解消、さらには心筋梗塞や脳梗塞などの疾病の予防にも効果があることが知られてきています。

【朝食は体内時計のリセットボタン】

体内時計を合わせるには、まずはしっかりと朝食を食べることが重要です。
時間栄養学では、朝食は「朝食べて体に栄養補給をするもの」という意味だけではなく、「夜の長い絶食時間を破って(ブレイク・ファスト)食べるもの」という意味があります。つまり、夕食を取ってから朝に至るまでの(就寝時間を含めた)夜の長い絶食時間を経て摂取するものだからこそ、体に朝が来たことを認識させる、「1日の体内時計をリセットするボタンのようなもの」です。このリセットボタンが押せない状態だと、いつまでたっても体内時計は整いません。朝食を食べる習慣のない方は、朝食を食べるようにすることで、体の調子が少しずつ変わってくるかもしれません!
朝食が「夜の長い絶食時間を破って(ブレイク・ファスト)食べるもの」であるならば、夕食を取る時間も重要ということになりますね。理想的なのは、夕食から翌朝の朝食までの時間が12時間ほど空いている(=1日のうち、朝食から12時間以内に夕食を食べる)状態です。アメリカの研究では、肥満の被験者で、朝から夜までの1日の食事を14時間以上過ぎて食べていた人を、10~11時間以内で食べるように16週間コントロールしたところ、体重減少と睡眠改善が見られたといいます。つまり絶食時間を長くすると、太りにくくなりぐっすり眠れるというわけです。
残業などで夕食がどうしても遅くなってしまう場合は、理想の夕食時間におにぎりやパンなどの主食を取っておき、帰宅後に主菜(肉、魚等)や副菜(野菜等)のおかずを取るようにしましょう。夕食を分けて取ることで、体内時計が夜型になるのを防いでくれます。 ダイエットをしているから、朝は食べる気にはなれないから、といって朝食を抜いている方、その行為自体が太りやすい原因、朝の体の調子が良くない原因になっているかもしれません。これからは食べる時間も少し意識し、朝食を食べて体に朝が来たことを認識させ、夕食は朝食からなるべく12時間以内に食べ終える、メリハリのある食生活に変えていきましょう。

【食べる量と体内時計は関係する?】

朝食、昼食、夕食のうち、一番食べる量が多いのはどの食事ですか?と聞くと、たいていの方は夕食の量が多いと答えます。さらに、夜中にだらだらと夜食をつまんだり、お酒を飲んだりする習慣はありませんか?
体内時計の働きで、私たちの体は、夕食の時間帯に食べたものを体に脂肪として蓄えるようになっています。そのため、夕食の量が多い人ほど太りやすく、体内時計が乱れ、夜型になりがちです。ダイエットしたい、よく眠りたい、朝の仕事の効率を上げたいのでしたら、朝食を抜くのではなく、まずは夕食の量を多くし過ぎない、夜食を控えることの方がずっと効果的です。
理想の食事の量は「朝4:昼3:夜3」です。ポイントは、「朝」と決めた時間帯の食事は量をしっかりと取ること、夕食は他の食事より少し軽めにすることです(図表1)。
難しいようであればせめて「朝3:昼3:夜4」にできると良いですね。

図表1
図表1

【体内時計が動きやすい食品とは?】

GI(グリセミック・インデックス)値という言葉を聞いたことがありますか? GI値とは、食後の血糖値の上がりやすさを示した指標で、食品ごとに設けられています。
ダイエットや健康のためには、食後の血糖値を緩やかに推移させる方が良いので、低GI値の食品の方が注目されています。しかし、体内時計を動かしやすい食品は、GI値が高い食品(食後に血糖値を上げやすい食品)なのです。
ではいったい何が良いのか?ということですが、ポイントは、夜にGI値の低い食品を中心に摂取し、朝にGI値の高い食品を取るようにすることです。GI値の高い食品は体内時計を動かしやすいため、夜に多く摂取すると体内時計が乱れやすくなります。逆に朝に摂取すると、しっかりと体内時計のリセットボタンが押せますね。また、魚油は体内時計を動かす効果が大きく、即効性もあることが分かっています。特にマグロの油は、DHA・EPAが豊富に含まれているため、体内時計を動かしやすいそうです。朝食は、例えばご飯と焼き魚、もしくはツナサンドを選ぶと理想的です(図表2)。

図表2 GI値の低い食品と高い食品の例

図表1

体内時計を動かすためには1つの食材のみを取るのではなく、炭水化物(糖質)、たんぱく質、脂質などバランスの良い食事を取るよう心掛けましょう! ちなみに、筋肉をつけたい場合には朝食時にたんぱく質(肉、魚、卵、乳・乳製品など)を、骨を強くしたい場合には夕食時に納豆などの大豆製品を取り入れるのが効果的という研究データもあります。あわせて意識してみると良いかもしれませんね。

<今回のポイント>

  • ・朝食はしっかり食べ、夕食は朝食から12時間以内に取れるよう意識しましょう
  • ・食事量のバランスは「朝4:昼3:夜3」が理想的です
  • ・朝はご飯と魚で体内時計をリセット、夜は大豆やきのこ類、野菜などのおかずを中心にしましょう
※医師の指示がある方は、その指示を守った食生活を心掛けましょう。

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著者:薬樹

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