MENUMENU

健康コラム

Vol.7 運動と健康

~これなら続けられる
健康な体づくりのためのウォーキング~

突然ですが、「平均寿命」と「健康寿命」の違いはご存じでしょうか?
「平均寿命」は、いわゆる長寿を全うするまでの寿命を指し、「健康寿命」は自立して元気に過ごせる期間のことです。平均寿命と健康寿命の間には、女性では約12年、男性では約9年、平均すると約10年の差があります。この10年は病気や障害が現れ始め、自立度の低下や寝たきりになるなど、何らかの介護が必要な状態へ移行する期間だといわれています。そこには「歩けなくなる」「食べられなくなる」「認知できなくなる」という三つのハードルが順番に現れ、その都度自立度が低下していくといわれています。
医療の進歩に伴い、私たちの平均寿命が飛躍的に延びたことに対し、まだまだ健康寿命の延びは追いついていない状態です。いつまでも健康でいるために、最初のハードルである「歩けなくなる」を予防しましょう。

【栄養と運動の関係】

「運動をするためには食事が大事」ということは、皆さん何となくご存じですよね。今回は、なぜ大事なのか、どんな栄養素が重要なのかを解説します。
運動をするには筋肉を使いますが、筋肉をつけるために大切な栄養素は何だと思いますか?
それは「たんぱく質」です。たんぱく質は、人間の体の中で水分の次に多い成分で、筋肉を作ること以外にも、血液を作る、骨(コラーゲン部分)を作る、免疫機能の材料を作る、体のエネルギー源となるなど、私たちの体を作るために必要な栄養素です。
たんぱく質は、肉や魚、卵、牛乳・乳製品、豆類・大豆製品に多く含まれていますが、どのたんぱく質も食べた後にそのまま体内に吸収されているわけではありません。たんぱく質は主に20種類のアミノ酸から作られており、吸収される際にアミノ酸に分解されます。
ちなみに、たんぱく質を構成する20種類のアミノ酸のうち、実は半数近くの9種類は体内で合成することができません。この9種類のアミノ酸を必須アミノ酸といいます。1種類でもアミノ酸が足りないとたんぱく質は合成できないため、必須アミノ酸は毎日の食事から取る必要があります。

<必須アミノ酸が豊富な食品>

肉類 魚類 卵 牛乳・乳製品 豆類・大豆製品

筋肉は日々、筋力を使うことやエネルギー供給によって分解されていきます。運動だけを行っても筋肉量と筋力の維持・増加が必ずしも促されるわけではありません。場合によっては、筋肉量が減少することがあるのです!
次のグラフ(図表1)は、アミノ酸摂取量と運動による筋肉の増減量を表したものです。アミノ酸、つまりたんぱく質のもととなる栄養素を摂取せず、運動もしない状態では筋肉量が減少するということは分かりますね(1安静時)。しかし、筋トレなどをして筋肉を鍛えていても、筋肉の材料となるアミノ酸が足りていない状態では、筋肉の量も減ってしまうのです(3運動後)。筋肉を効率よく合成するには、アミノ酸(たんぱく質)の摂取と運動を併せて行うことが非常に重要だということが研究データから分かっています(4運動後+アミノ酸)。

図表1

【ウォーキングを始めてみませんか】

ウォーキングは心肺機能が高まる、血行が良くなる、骨が強くなる、血圧が下がるなど、生活習慣病の予防になります。さらに、脳の活性化、気分が良くなる、疲れにくくなる、ストレスが解消できるなどの精神的な効果もあります。また、早歩きをすることで筋肉量の維持・増加もできることが分かっています。そこで、ウォーキングを始めてみようかなという方に、ウォーキングのポイントを幾つかご紹介します!

①正しい靴選び・靴の履き方を知りましょう

ウォーキングをする上で靴選びは重要です。靴を選ぶ際のポイントと正しい靴の履き方をチェックしましょう(図表2)。

□足先にゆとりがあるか
□指の付け根が曲がりやすいか
□かかと、つま先、足の甲などに靴ずれを起こしそうな心配はないか
□かかとの部分がしっかりと包み込まれているか
□かかと部分にクッション性があるか

図表2

②ウォーキングフォームを確認しましょう

正しい歩き方を身に付けると、体への負担の軽減や運動の効果が上がるというメリットがあります。基本のフォームを身に付けて、ケガなく健康的に歩きましょう(図表3)。

図表3

③目標を持ちましょう

ただ漠然と運動していても、長続きさせることは容易ではありませんよね。ウォーキングを始める前にまず、目標設定をしてみましょう! 「ベスト体重を目指すために3kg減量する」という最終的な目標を決めることも大切ですが、小さな目標も設定しましょう。例えば、「1回15分のウォーキングを朝の通勤時や帰宅時に取り入れよう」といった目標を立てることで、無理なく歩くことができるのではないでしょうか。小さな目標をクリアしていくことで、ウォーキングの時間や歩数が徐々に増えていくかもしれませんよ。

④インターバル速歩を取り入れてみましょう

インターバル速歩とは、その人の最大体力の7割以上に相当する「速歩(早歩き)」と、最大体力の4割以下に相当する「緩歩(ゆっくり歩き)」を3分ずつ交互に行うというものです。早歩きとゆっくり歩きを繰り返すことにより、筋肉への負荷が調節され、体に無理なく筋肉量と筋力を維持・増加させることができます。少し意識するだけでできますので、ぜひチャレンジしてみてください。

【運動前後の食事のポイント】

「運動をするためには食事が大事」ということは、皆さん何となくご存じですよね。今回は、なぜ大事なのか、どんな栄養素が重要なのかを解説します。
ここまでで、運動のためには食事をしっかり取ることが大切だとお分かりいただけたかと思いますが、摂取するタイミングにもポイントがあります(図表4)。
アミノ酸が十分に供給されない空腹時に運動を実施すると、人は体を動かすために筋肉のたんぱく質を分解し、エネルギーを生み出します。そのため、空腹時の運動はたんぱく質合成よりも分解反応を進めやすいのです。運動前に空腹感がある場合には、消化に良い炭水化物や果物を取るなどして、エネルギーをしっかり確保しておきましょう。
運動時にはたんぱく質の合成は低下し分解が進みますが、運動終了後にはたんぱく質の合成が進むようになります。このタイミングは、筋肉を増やすために栄養素を補給する絶好のチャンスです。運動終了後、できれば30分~1時間以内にたんぱく質(アミノ酸)を摂取しましょう。運動後すぐに食事が取れない場合には、手軽にパッと食べられる食品である、牛乳、チーズ、豆乳、ヨーグルト、アミノ酸飲料などもおススメです。

図表4

<今回のポイント>

  1. 歩くための筋肉の維持・増加のためにたんぱく質(アミノ酸)を十分取りましょう。
  2. 意識したウォーキングを習慣にしましょう。
  3. 空腹での運動は避けましょう。運動直後は絶好のたんぱく質摂取のチャンスです!

「健康ごはんPart2」詳細



「健康ごはん」詳細



健康相談から生まれた薬樹の管理栄養士のレシピ本

著者:薬樹

ページの先頭へ