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健康コラム

Vol.11 フレイル、サルコぺニア、ロコモティブシンドローム

~ずっと歩ける自分でいるために。今日からできる3つのこと~

フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームという言葉を聞いたことはありますか?
今回はこの3つの違いと、その予防策について解説します。

【フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームとは】

高齢になるにつれて、体が衰えてきたなと感じることは誰にでもあることです。この「衰えてきたな」をそのまま放置するのか、何か対策をするのかによって残りの人生の生活が変わってきます。寝たきりの生活ではなく、自分の力でずっと歩ける自分でいるために、フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームについてぜひ知っておきましょう!

■フレイルとは?
図表1 自立と加齢のグラフ

フレイルとは「Frailty(フレイルティ)」からきており、日本語に訳すと「虚弱、老衰」となります。 厚生労働省はフレイルを、「加齢とともに、心身の活力(例えば筋力や認知機能等)が低下し、生活機能障害、要介護状態、そして死亡などの危険性が高くなった状態」としています。 これだけ聞くとなんだか怖い病気のように聞こえますが、フレイルは、適切な介入や支援により生活機能の維持向上が可能な状態です。図表1の通り、健康と要介護の間の状態を指す言葉が「フレイル」です。

■サルコぺニアとは?
図表1 自立と加齢のグラフ

サルコぺニアは、ギリシャ語で筋肉を表す「sarx(sarco:サルコ)」と喪失を表す「penia(ぺニア)」を合わせた言葉です。つまり、加齢に伴う筋力の低下、または老化に伴う筋肉量の減少を指します。握力や、歩くスピードが遅くなった、階段を上るとき手すりが必要になってきたという方は注意が必要です。 サルコぺニアの簡単な評価方法として「指輪っかテスト」(図表2)があります。やり方は、両手の親指と人さし指で輪っかを作り、ふくらはぎの最も太い部分を囲むだけです。「囲めない」「ちょうど囲める」「隙間ができる」の順にサルコぺニアの可能性が高まるとされています。

個人差はありますが、40歳前後から徐々に筋肉は減少傾向が見られ始め、その傾向は加齢とともに加速していきます。中には1年で5%程度筋肉が減少したという例もあるそうです。自覚症状がなくとも、筋肉は減っている可能性があるため、注意が必要です。

■ロコモティブシンドロームとは?
図表1 自立と加齢のグラフ

ロコモティブシンドローム(locomotive syndrome)は運動器症候群という意味で、運動器(筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板など)に障害が起こり、「立つ」「歩く」といった機能が低下している状態のことを言います。これらが低下すると、日常生活が困難になり、悪化すると要介護・寝たきりの状態となってしまいます。2019年の厚生労働省による調査では、要支援・要介護が必要となった原因の約25%を「関節疾患」「骨折・転倒」が占めています。いつまでも自分の足で歩き続けるためには、いかに運動器の維持が大切かということが分かりますね。 ここまで、フレイル、サルコぺニア、ロコモティブシンドロームとそれぞれ解説してきましたが、似たような意味ばかりで混乱しやすいので、関係性を図表3にまとめてみます。

【今日からできる3つのこと】

まだ大丈夫!は危険です。元気なうちにしっかりと体を鍛えておきましょう。まずは以下の3つをやってみることからスタートしましょう。

1.自分の生活機能についてチェックしてみましょう!
階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか0.はい1.いいえ
椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっていますか0.はい1.いいえ
15分間位続けて歩いていますか0.はい1.いいえ
この1年間に転んだことがありますか1.はい0.いいえ
転倒に対する不安は大きいですか1.はい0.いいえ
6ヶ月間で2〜3kg以上の体重減少はありましたか1.はい0.いいえ
BMIは18.5未満ですか *BMI(=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m))1.はい0.いいえ
半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか1.はい0.いいえ
お茶や汁物等でむせることがありますか1.はい0.いいえ
口の渇きが気になりますか1.はい0.いいえ
厚生労働省(2009)「介護予防のための生活機能評価に関するマニュアル(改訂版)」基本チェックリストより抜粋・改変

皆さん何点になりましたか?点数が高いほど生活機能に注意が必要な状態です。厚生労働省から基本チェックリストが出ていますので、気になる方はぜひ詳しくチェックしてみてください。

2.筋肉を育てる食事をしましょう!

フレイルやサルコぺニア、ロコモティブシンドロームを予防するためには、たんぱく質の摂取が非常に重要です。たんぱく質は筋肉を作るもとになっており、たんぱく質摂取量が足りていないと、いくら運動を頑張っても筋肉はつかない!というほど重要な栄養素です。厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、1日60g程度のたんぱく質摂取を推奨しています。60gのたんぱく質量を目安で言うと、1食当たり片手のひら1つ分程度の大きさのたんぱく質が豊富に含まれている食材(肉・魚・卵・大豆製品等)が取れている状態です。

ちなみに、たんぱく質はアミノ酸から構成されているのですが、中でも今注目されているのが必須アミノ酸の「ロイシン」です。筋肉の合成を促す作用があるとして注目されています。ロイシンは赤身の肉やレバー、マグロやタラ等の魚にも豊富に含まれています。 また、筋肉を育てるためには、たんぱく質を摂取するのと同時に十分なエネルギー摂取も必要です。 十分にたんぱく質を取っていても摂取エネルギー量が少ないと、せっかく取ったたんぱく質が筋肉になるもととして使われずに、エネルギーとして使われてしまいます。十分なエネルギーを確保した上で、たんぱく質を摂取することが筋肉を育てます。 さらにプラスで、ビタミンDも意識して摂取できると良いです。ビタミンDはカルシウム代謝や骨代謝に関わっていることは皆さんご存じかと思いますが、近年の研究で、ビタミンDは筋肉の成長に貢献しているということが分かってきました。ぜひ、ビタミンDも摂取するよう意識してみましょう。

3.簡単筋トレにチャレンジしましょう!

筋力トレーニングをすると、摂取したたんぱく質の筋肉合成への利用効率が高まるとされています。 また、運動により骨を強くする効果が期待されています。今回は3つの簡単筋トレをご紹介しますので、ぜひお家でテレビを見ている時間、歯を磨く時間等、隙間時間に取り入れてみてください。 次の動作を大体8秒ほどかけてゆっくり行ってください。 1セット10回を目安に1日3回行えると良いですね。※運動前にはストレッチを十分に行いましょう。

★椅子立ち上がり(大腿四頭筋の筋トレ)
図表1 自立と加齢のグラフ
  1. 足を腰幅よりやや広く開いて座り、手は腰に当てる
  2. しっかりと足を踏みしめながら4秒かけてゆっくり立ち上がり、4秒かけてゆっくり座る
★もも上げ(腸腰筋の筋トレ)
図表1 自立と加齢のグラフ
  1. 安定した台に手に置き、体を安定させる
  2. 片足ずつ膝を胸に引きつけるように4秒かけてゆっくり上げ、4秒かけてゆっくり下ろす ※背筋が曲がらないように注意しましょう
★かかと上げ(下腿三頭筋の筋トレ)
図表1 自立と加齢のグラフ
  1. 安定した台に手を置き、足を腰幅に開いて体を支える
  2. つま先立ちするように、かかとを上に4秒かけてゆっくり引き上げ、4秒かけてゆっくり戻す

<今回のポイント>

いつまでも自分の足で歩けるように、

  1. 今の自分の体の状態を知りましょう!
  2. 筋肉を育てるためにたんぱく質、十分量のエネルギーは意識して取りましょう!
  3. 隙間時間に簡単筋トレを取り入れ、筋肉を刺激しましょう!

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