変異株とワクチン

変異株とワクチン
薬樹株式会社 薬剤師坪内 理恵子
変異株のイメージ

 COVID-19ワクチンは大きな期待の中、世界中が積極的に接種を進めています。 しかし、通常ウイルスは、増殖する過程で少しづつ変異(遺伝子情報の変化)を起こして、感染しやすくなるなど性質が変化していきます。これが変異株で、新型コロナ変異株は今まで無症状であった世代(不顕性感染)にも症状が出ており、重症者も多数報告されています。

変異株の種類(現時点)

N501Y変異株

 主にイギリス株、南アフリカ株、ブラジル株の3つをいいます。それらは、共通してN501Y変異をもっていますが、イギリス株以外についてはE484K変異も伴っています。N501Y変異株は、感染力や病原性、免疫逃避能(南アフリカ株、ブラジル株)が従来の株よりも高いといわれています。(従来株と比べて、実行再生産数は1.43倍から1.9倍であり、死亡リスクは1.55倍上昇)

E484K変異単独変異株

 N501Y変異を持たず、E484K変異のみをもつ株のことをいいます。  抗体の攻撃から逃れる性質を持つと考えられ、従来株よりも免疫やワクチン効果を低下させる可能性が指摘されています。

L452R変異株

 L452R変異をもつ株のことをいいます。インドで患者が増加している変異株(B.1.617系統)では、L452Rが単独で変異を有するものと、L452Rの他にE484Q変異を伴うものが確認されています。感染力が強く免疫やワクチンの効果低下が懸念されています。

 これら変異株の力は、3密などの従来の感染対策を乗り越えてしまうかもしれません。

変異株とコロナ(COVID-19)ワクチンの効果

 では、COVID-19ワクチンは変異株に対して、どこまで効果があるのでしょうか?  横浜市立大学研究チームによりますと、ファイザー製ワクチンの有効性について、従来株 および変異株 7 種の計 8 株に対する中和抗体を測定しました【⽇本⼈のワクチン接種者 111 名(未感染 105 名、既感染 6 名)】ところ、未感染者でワクチンを2 回接種した⼈のうち、99%の⼈が従来株に対して中和抗体を保有していました。また、流⾏中の3 つの変異ウイルス株(英国、南アフリカ、ブラジル)に対しても、90〜94%の⼈が中和抗体を有していました。インド由来の株に対しても中和抗体陽性率が低下するような傾向は⾒られなかったそうです。また、計 8 株すべてに中和抗体陽性であった⼈は全体の約 9 割(93/105; 89%)であったと報告されています(横浜市立大学プレスリリースより2021年5月12日)

 つまり、新型コロナ変異株に対するワクチン接種者の約9割が 流行中の変異株に対する中和抗体を保有することが明らかになったということです。

 とはいえ、ワクチン接種によりCOVID-19に対して抗体を獲得するまでは、引き続きしっかりとマスク着用・手指衛生等感染対策を心がけましょう。
 また、最近では、抗原検査キット付きの宿泊プランやバスツアー、イベント開催も試されるようになりました。今、自分が感染していないことの確認も大事なことかもしれませんね。

 薬樹薬局でも抗原検査キットを取り扱っておりますので、お気軽にご照会ください。

はたらく細胞「新型コロナウイルス編」 日本語版(厚生労働省 Ⓒ清水 茜/講談社
https://www.youtube.com/watch?v=0WZJ32NqWUA

引用資料:
*横浜市立大学プレスリリース
https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2021/20210512yamanaka.html